なんのために歳を重ねるのだろう?「対岸の彼女」を読んで

f:id:mightymind11:20161112125459j:plain

生涯の中で何度も読み返したくなるような本はそんなに多くないと思います。

 

私は本を購入する時、この本を読み返したいと思えるだろうか?と思える本だけ購入するようにしています。なので自宅の本棚にはそれほどたくさんの本はありません。

 

自宅の本棚にある本を手に取って10年ぶりぐらいに読んでみました。10年ぶりに読んでみて新たな気づきがあり、自分が何を大切に思っているのかを改めて確認できた気がしました。

 

本当に人が大切にしていることというのは、どれだけ時間が経っても変わることのないものです。

 

本当に好きな本は自分が大切にしているものを教えてくれる。

 

そんな私の好きな一冊の本。

対岸の彼女 (文春文庫)

「対岸の彼女」2人の主人公の2つの視点から物語が展開

本書の特徴は2人の視点から物語が展開するところです。

 

一人の主人公小夜子は3歳の娘がいる30代の主婦。結婚後勤めいた会社を退職、娘を出産する。公園で遊ばせるようと思ってもそこには主婦特有の世界があり、派閥や人間関係の煩わしさを感じる。自分の住む世界の狭さを感じていた折、働くことですべてが変わるのではないか?と仕事を探しそこでもう一人の主人公葵と出会う。葵は零細企業の社長で小夜子とは全く違う人生を歩んでいるように見える。

 

もう一つのストーリーは葵が主人公。葵は中学時代にいじめを受けたのがきっかけで転校。新しい高校でもいじめの対象にならないように過ごす中で、魚子という女の子と出会う。 いつも明るく振舞っている魚子と仲良くなり、学校外ではいつも一緒に遊んだり他愛ないことで笑ったり、一緒に時間を過ごしてく。いつも明るく振舞って見える魚子の生い立ちを知りその闇を知り物語が進んでいく。

人間関係の中から本当に大切なことを見つける

大勢の中にいるほどに孤独感を感じる時はあります。人間関係の煩わしさに嫌になる時もあります。

ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。

こんなところにあたしの大事なものはない。いやなら関わらなければいい。

大人になるに従いその大切なものが見えなくなってしまう。重要ではないことに時間を取られ、好きでもない人間関係に支配されて…本当に大切なことって何だっけ?と考えさせられる。

なんのために歳を重ねるのだろうか?

学校内でのいじめ、大人になってからも職場や母親たちのコミュニティと人間関係が生じてきます。コミュニティの根本的なことは学生も大人になってからもそれほど大きな違いはない。

 

誰かを陰で悪く言って蔑んだり罵り合ったり。そんな人間関係の煩わしさに嫌気が差してしまう。

 

なんのために人は歳を重ねるのだろう。何度も繰り返し問われる言葉。

 人と関わり合うことが煩わしくなったとき、都合よく生活に逃げこむためだろうか。銀行に用事がある、子どもを迎えにいかなきゃならない、食事の支度をしなくちゃいけない、そう口にして、家のドアをぱたんと閉めるためだろうか。(中略)

なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。

 

スポンサーリンク

 

それでも…人と出会い繋がること

私っていつまで私のまんまなんだろう。


冒頭の一行。


もっとこんな風だったら良いのに…そんな願いを感じさせる。現状に不満で変わりたいのだけれど、新しい出会いや人間関係のわずらわしさを思うと一歩踏み出すことに億劫になってしまう。

 

歳を重ね大人になると建前がうまくなるに従って、心の奥にある本当の気持ちを表現しなくなる。そんな毎日はなぜだか孤独感を感じるときがある。

 

学生の時のように毎日顔を合わせ、くだらないことを言い合ったりできる関係をうらやましく思える…。

 

大人になって思うことはそんな気持ちを言い合えるような場所や環境を作っていくことが必要なのかなと思います。

 

本書の帯に著書がこんなことを書いています。

 

おとなになったら、友達をつくるのはとたんにむずかしくなる。(中略)高校生のころはかんたんだった。いっしょに学校を出て、甘いものを食べて、いつかわからない将来の話をしているだけで満たされた。けれど私は思うのだ。あのころのような、全身で信じられる女友達を必要なのは、大人になった今なのに、と。

 

歳を重ねるに従い必要のないものまで背負いこんでしまう。本当に大切なことはすごくシンプルなことだと思う。

 

人間関係にわずらわしいし面倒くさい…って思ってしまった時に読んでみると良いと思います。

 

人と出会い新しい場所にきっと大切な何かが見つかるはず。そんな気持ちにさせてくれる一冊。

広告